権力者の染色
染色は古代エジプトやペルシャ、中国、インドにおいて、植物・昆虫・貝・鉱物などを原料として古より行われてきました。「染」=「水と木に九回」という字が示す通り、「九」は数の多いこと、「木」は染料となる植物を表しており、衣服を染めることはお金と時間がある権力者や裕福な人にしか赦されませんでした。
日本書紀 ; 巻第廿二 <複製> -- 日本古典文学刊行会, 1972. -- (複刻日本古典文学館).
資料ID:20986193 配置場所:貴重 請求記号:913.2||43
養老4年(720)に成立した日本初の正史『日本書記』の平安中期の写本。かつて岩崎家(旧三菱財閥本家)が所蔵していたことから「岩崎本」の名で呼ばれる。
推古11年12月、聖徳太子は大徳・小徳・大仁・小仁・大礼・小礼・大信・小信・大義・小義・大智・小智の「冠位十二階」を制定した。定められた色の絁(あしぎぬ=太い糸で織った絹布)で嚢(袋)のように縫い、縁取りをつけ、頭の頂に載せた。具体的な色を書いていない。
「憲法十七條」「以和爲貴」という文も見える
延喜式 ; 1 <影印> -- 臨川書店, 2000. -- (国立歴史民俗博物館蔵貴重典籍叢書 ; 歴史篇第14巻).
資料ID:30423374 配置場所:3階R8 請求記号:081.7||17||1-12
延喜5年(905)、醍醐天皇の勅により平安中期の法典「律令」の細則を集大成したもの。
まとまった古鈔本としては現存最古の南北朝時代の写本。
雑染用度に36色の染料の作り方が示されている。
素材別(綾・帛・羅・糸)に、染料となる草木の量、触媒となる酢・灰などの量、さらに火加減のための薪の量まで記載されている。冠位で決められた正確な色を出す必要があったため。
王朝盛飾 : 平安朝の色 ; 色帖 / 松本宗久著. -- 学習研究社, 1981.
資料ID:20568849 配置場所:1階D20閉架 請求記号:753.2||39
Das Buch von Lindisfarne <facsimile>. -- Faksimile-Verlag, c2002.
資料ID:30512580 配置場所:貴重 請求記号:193||Bu
リンディスファーンの福音書
修道僧による手書き装飾写本。製作年代は715年頃とされ、ラテン語から英語に訳されたもっとも古い聖書。
カーペット・ページとよばれる装飾ページやケルト模様などが非常に美しい。
イエス・キリストは捕らえられ、ユダヤの王だと偽り民衆を先導したという罪で十字架にかけられることになった。ローマ兵はキリストに赤い服(マタイ伝)、あるいは紫の服(マルコ伝・ヨハネ伝)を着せ、頭に茨の冠を被せた。
当時庶民は生成りの服を着ていたので、色付きの王の格好させ皮肉った。
草木染め
明治初期までは、天然染料で染められていたので、変色を少なくするために、染めと乾燥の工程を何度も繰り返していました。
1856年、イギリス人W.H.バーキン(18歳)が化学染料を発明し、その後あらゆる染料が合成され、現在、染色といえば化学染料によることを意味します。天然染料の場合は「草木染め」とよんでいます。
草木染染色歳時記 / 山崎青樹著. -- 美術出版社, 1998.
資料ID:30374140 配置場所:3階M6 請求記号:753.8||48
和名類聚抄 : 二十巻本 (複製) / 源順撰 ; 古辞書叢刊刊行会編. -- 古辞書叢刊刊行会. 1973. -- (古辭書叢刊 ; 14 / 古辭書叢刊刊行會編).
資料ID:22051752 配置場所:1階W3閉架 請求記号:813.2||Wa||7
室町時代中期の写本。二つ折りにした紙の山の部分を糊で貼り合わせる「粘葉装」という綴じ方。
和名類聚抄は、源順が醍醐天皇の四女勤子内親王の命により編集した国語辞書。935年完成。分類で項目を立てる編集では最古の辞典。漢籍を引用して語句を説明している。
染色具の項で、平安時代の染色の材料が確認できる。
藍
日本のサッカー選手が「サムライブルー」と呼ばれているように、日本を代表する色に青色が選ばれたのは、明治期に日本に招聘された西洋人が町中に藍色があふれているのを見て「ジャパン・ブルー」と名付けたことに由来している。
江戸時代に藍は、どこの村にも必ず紺屋が1軒はあったほど庶民の色として普及した。
群書類従 : 七十一番歌合 ; 巻第503上 / 塙保己一編 -- 温故学会日本文化資料センター, 1985.
資料ID:20896362 配置場所:1階W2閉架 請求記号:081||13||503-1
『七十一番職人歌合』は室町時代に成立したとされる中世後期最大の職人を題材とした歌合。
江戸時代に塙保己一が『群書類従』に収録した。
紺掻(こうかき)
室町時代は藍建ての壷がむき出しで保温されていない。
日本風俗圖繪 : 和国諸職繪盡 / 黒川真道編 -- 日本風俗圖繪刊行會, 1914.
資料ID:21804069 配置場所:1階W4閉架 請求記号:832.1||Ku||2
『和国諸職繪盡』は、貞享2年(1685)菱川師宣が「七十一番職人歌合」をもとに当時の姿に書き換えた。
展示資料は、大正3年(1914年) に日本風俗図絵刊行会が復刻した『日本風俗図絵』より。
紺掻(こうかき)
江戸時代は、発酵促進のため藍建ての壷が埋められて保温されている。
本草図譜 ; 巻19 <複製> / 岩崎潅園著 -- 限定版. -- 同朋舎出版, 1980.
資料ID:30613485 配置場所:1階W2閉架 請求記号:499.9||Ho||1-15
江戸後期の植物図鑑。96巻。文政11年(1828)刊。岩崎灌園が約2000種類の植物を写生し、山草・湿草・毒草などに分類して著した。
日本で古くから使われてきた藍は蓼藍(たであい)。藍の絵はそのほかに、西洋の菘藍(ウォード)、インドの木藍などが描かれている。
大日本物産圖會 : 下巻 <複製> / 一立齋廣重畫. -- 雄松堂書店, 2013.
資料ID:30901049 配置場所:1階D20閉架 請求記号:721.8||Da||2
明治10年(1877)に開かれた第1回内国勧業博覧会に出品された揃い物の錦絵で、日本諸国の名産品などをテーマに三代歌川広重絵筆をとった。
ちなみに摂津は伊丹の酒造。播州は姫路の革店、赤穂の塩。淡路は鯛・ブリの網漁。
刈り取った藍は鉈(なた)で細かくして日に干し乾燥させる。乾燥した葉にたびたび水をかけて上下返しながら発酵させ、「すくも」を作る。「すくも」を臼でつき固め、丸めた藍玉が全国の染師に送られる。藍染めは「すくも」に灰汁やふすまなどを入れて「藍建て」をして染める。
染め技法による紋様
蝋で防染して染める「ろうけつ染め 」、糸でくくったり板に挟んだりして防染し染めない部分を残す「絞り染め」、模様を切り抜いた型紙を用いて柄を染める「型染め」や「小紋」、糊で模様の輪郭を防染してその内側を染める「友禅」などがあります。
正倉院展 ; 平成8年(第48回). -- 奈良国立博物館, 1996.
資料ID:21609855 配置場所:1階T6閉架 請求記号:069.5||1||19
夾纈(きょうけち):板締め
布を折り、模様を切った薄い板で挟んで、枠内に染料を流し込んで模様を出す。染め上がりは布の折り目を中心に左右対称となるのが特色。平安時代以後は行われなくなった。
日本伝統絞りの技 / 榊原あさ子著. -- 紫紅社, 1999.
資料ID:30605725 配置場所:3階M6 請求記号:753.8||Sa
纐纈(こうけち):絞り染め
生地をつまんで糸で縛ったり、縫い締めたりして、染料に浸す技法。糸を取れば絞った部分が染め残って紋様となる。古来から世界中で作られているが、日本では江戸時代に複雑な技法があみ出され、その変化の多いことで世界一である。
ジャワ更紗の染色 / 上村六郎著. -- 限定版. -- 関西衣生活研究会, 1973.
資料ID:20265175 配置場所:1階C3閉架 請求記号:753||6
﨟纈(ろうけち):ろうけつ染め
蝋で覆って防染することにより、紋様を出す。
更紗はインドが起源の、木綿地に蝋引きや型を使って紋様を染めた布製品。大航海時代に日本に渡ってきた。
当世都雛形 / 井筒屋磯次郎, 塩飽屋貞兵衛画, 天明5年(1785)
資料ID:2180283 配置場所:貴重 請求記号:【十四-17】
雛形は図案を集めた見本帳。おもに江戸時代から明治にかけて数多く出板された。小袖の雛形は当時の流行を集めたファッションデザイン集。
友禅
扇絵画工の宮崎友禅が始めた糊防染による染め。生地を一度着物の形に仕立てて下絵を描き、その上に糊を置いて、糊で囲まれた中に色を差す。その上をまた糊でおおい、地染めをする。最後に糊を洗い流す。
小紋手鑑 / 吉岡常雄著. -- 紫紅社, 1973.
資料ID:30631151 配置場所:3階M6 請求記号:753.8||Yo
小紋
型紙染め。柿渋で数枚の美濃紙を固めたものを燻して丈夫にし、彫刻刀で文様を彫る。掘り抜いた型紙で、糊を置き防染し染色していく。
武士が着用する裃に小紋がよく使われたが、豪華さを競うようになり幕府から規制を受けたことから、遠くから見ると無地に見えるように模様を細かくするようになった。
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