神戸女子大学図書館

 

               

展 示

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■2019年度   Spring

            
江戸時代の料理本 レシピと献立集
 

 
食べることに精一杯だった「生きるための食」から、室町時代には今の和食の原型が形成されました。
やがて出版文化が盛んになった江戸時代には専門家に向けた料理本が発行されるようになり、生活に余裕がでた享保期には一般向けの料理本も登場して、食を楽しむ独自の料理文化が根付いたのです。

第一期 江戸初期 料理本の出版の始まり

料理物語. -- 複製版. -- 臨川書店, 1978.
20291624/ 所在:W2 / 請求記号:596.21||1||1-41
原本は寛永20年(1643)


実際に料理をする人に向けて日本で初めて出版された料理書。それまでの伝書としての料理書と違い、徹底して料理の実用的知識を書き記している。

特徴 
前半に材料別の料理例、後半に調理法が載る。
油を使った料理は出てこない。
寛永の大飢饉により寛永19年「農民法令」が出たが、一方で食に贅沢している人がいることがわかる。
跋文に包丁式(朝廷の料理の儀式)の流派の伝書ではなく、人びとが作っている日常的な料理を聞いてまとめたので『料理物語』と名付けたと書いている。

鹿、狸、猪、兎、川獺、熊、犬を具財とした料理例
仏教伝来以降、殺生忌避の観点から獣肉食は敬遠されたが、全く食べないわけではなかった。日本では古来より食用の家畜はおらず、主に狩猟で得た肉を食べていた。



料理切形秘傳抄 -- 複製版. 九巻九冊 -- 臨川書店, 1977.
2029080~8/ 所在:W2 / 請求記号:596.21||1||3-6~14
原本は寛永20年(1643)頃


包丁流派「四条家」の儀式料理に関する秘伝書。
包丁式での鳥や魚の切り方を図解で示している。

特徴 
天地創造から始まり、料理と神話の関係、さまざまな食礼や食器の由来、作法、儀式の説明が延々と続く。
秘伝書なのに印刷・刊行。



料理献立集.
2180303/ 所在:貴重 / 請求記号:【十五-14】
寛文十年(1670)以前


江戸時代に刊行された献立集の中で最も古い。
菱川師宣の挿絵。
刊年を削り取って再三刊行された。

特徴 
月別に、汁・吸物・取合・鱠・あへまぜ・す・あへ・煮物・さし身について材料名を列記し、所々に簡単な料理法を記している。



料理秘伝抄    
2180305/ 所在:貴重 / 請求記号:【十五-16】
寛文十年(1670)刊


『料理物語』の抜粋本。また『料理献立集』と全く同じ絵を使用。



第二期 元禄期 料理百科事典の時代

合類日用料理抄 / 無名子[著]  
2180299 / 所在:貴重 / 【十五-10】
寛政四年(1792)刊 初版は元禄二年(1689)


料理に関する体系性を備えた事典。しかるべき家の料理人が買い揃えた。
調味料のつくり方、料理法、献立や料理に関する知識まで広く記載。

特徴 
各巻の内容は
巻一 酒、味噌、醤油、粉の作り方
巻二 餅、麪、菓子の料理法
巻三 漬物、豆腐、果実等の料理法
巻四 魚料理、鳥料理
巻五 魚やその他の料理、薬



当流節用料理大全/ 高島氏撰. 須藤権兵衛, 萬屋彦太郎板行
2180301 / 所在:貴重 / 【十五-12】
正徳四年(1714)


四条流の料理事典。
『料理物語』『料理切形秘傅抄』『料理献立集』『合類日用料理抄』『茶湯献立指南』から抜粋したものだが、挿絵が多く内容も豊富。
冒頭に式正料理(=しきしょうりょうり:正式な日本料理の饗宴)の説明がある。



第三期 享保期 一般の人が読者

料理網目調味抄 / 嘯夕軒宗堅 [著] ; 1 - 5. -- 複製版. -- 臨川書店, 1977.
20290665/ 所在:W2 / 請求記号:596.21||1||1-12~16
原本は享保15年(1730)


専門家ではなく一般の人を対象とした料理の百科事典。
献立や材料に味に心を配りなさいと論じ、庶民の食生活に余裕が出てきたことがわかる。

著者の言葉を抜粋
この『調味抄』はただ庶人遊民どものことわざにして、大方は茶事によれる。 
料理は一座の能のごとし。まず献立は番組なり。魚鳥穀菜は役者なり。選ばずはあるべからず。按配は能の出来不出来なり。もっとも心を付べし。
飲食は人事の根本なれば、誰かはわきまえしらさらぬ。
今世治り民おだやかにして浦々山の奥までもみな衣食住に足れり。



古今名物御前菓子秘伝鈔 / 梅村市郎兵衛(水玉堂)編   
2180300/ 所在:貴重 / 【十五-11】
享保三年(1718)


日本で最古の菓子専門の料理本。
有平糖から白餡まで105種。分量や使用する器具についても詳しい。

特徴 
和菓子の原型は中世にすでにできていたが、まだ種類は少なく、製法も簡略なものにすぎなかった。
戦国期から茶の湯を通して大きく発達し、カステラやボーロなど南蛮菓子の影響で自由に砂糖や鶏卵が使われるようになると、菓子の種類も豊富になった。



第四期 宝暦~天明期 料理を楽しむ時代

獻立筌. -- 複製版. -- 臨川書店, 1978.
20291259/ 所在:W2 / 請求記号:596.21||1||1-2
原本は宝暦10年(1760)


趣向を凝らした献立プラン集。
献立に名前をつけて、それに因んだ見立て料理をつくるなど料理に遊びの要素を取り入れている。

特徴 
著者が料理人ではなく、奇をてらった献立で、料理に風流や遊びを取り入れた新しい文化が形成された。
後半は、材料を列挙してあり、それを小札に写して、自由に組み合わせて献立を考えるよう工夫されている。小札の表と裏は似た食材や同じ食材の成長タイプがくるようになっている。


年末に客を招いた時の献立例
 献立名:能番組
 料理名:「加茂」(能の演目) : 御手洗川のほとりの白羽の矢=みたらし団子
      「伊文字」(狂言の演目):伊勢を思い出せない太郎冠者に因んで伊勢海老
      「実盛」(能の演目):赤鯛と白藻で実盛の赤い衣裳と白髪を表現
=能と狂言は交互に演じられるため



豆腐百珍 / 何必醇輯. -- 複製版. -- 臨川書店, 1978.
20291334/ 所在:W2 / 請求記号:596.21||1||2-2
原本は天明2年(1782)

献立や料理法を四季もしくは食材別に構成するのではなく、素材を豆腐に限り100個の料理法を紹介している。
さらに豆腐に関する和漢の文献や、書、図版、漢詩などを載せ、読み物としても満足させる。
『豆腐百珍』の成功はその後の「百珍」ブームを巻き起こした。



万宝料理秘密箱 / 器土堂 
2180302/ 所在:貴重 / 【十五-13】
天明五年(1785)


鳥や卵、魚といった素材別に料理名と料理法を記した書。
卵料理の項には卵料理が103種載っており、別名「玉子百珍(たまごひゃくちん)」とも呼ばれる。

「料理秘密箱」シリーズ
『鯛百珍料理秘密箱』『新著料理柚珍秘密箱』『諸国名産大根料理秘伝抄』『大こん一しき料理秘密箱』『萬寳料理献立集』『万寶料理秘密箱』『大こん一しき料理秘密箱』を除いて著者はすべて器土堂。
『萬寳料理献立集』の目録には「卵百珍」と書かれている。


蒟蒻百珍 / 吉井始子監修. -- 翻刻版. -- 臨川書店, 1977.
20290764/ 所在:1階W2閉架 / 請求記号:596.21||1
鯛百珍料理秘密箱 / 吉井始子監修 ; 上. -- 翻刻版. -- 臨川書店, 1978.
20291037/ 所在:1階W2閉架 / 請求記号:596.21||1




第五期 化政期 食文化の爛熟期


料理早指南 / 醍醐山人
2180304/ 所在:貴重 / 【十五-15】
享和元年(1801)

 
享保まで外食はほとんどなかったが、宝暦~天明期に飲食店が急増。都市の下層部まで外食文化が浸透した。
料理本も化政期に入って急増する。

特徴 
初編から四編までを一冊にした合本。
初編:本膳・会席・精進料理の献立
二編:重箱料理
三編(山家集):塩物魚・干し魚類の調理法と普茶料理・卓袱料理
四編(談合集):味付け・焼き加減などの調味法と料理知識



料理通 / 八百善主人 [著] -- 複製版. -- 臨川書店, 1978.
2029163~6/ 所在:W2 / 請求記号:596.21||1||1-19~22
原本は文政五年(1822)-天保六年(1833)

江戸の高級料理店「八百善」の献立と料理法が載った本。
八百善の四代目主人が著し、酒井抱一や谷文晁、葛飾北斎などが絵、大田南畝が序、柳亭種彦が引札(宣伝ちらし)を書いている。八百善と化政期の文人の交流がわかる。



天保以降
天保改革以降厳しい倹約令が出され、風俗の取り締まりが強化された。料理屋にしても料理本にしても天保の改革を境に精彩を失い、江戸時代を通じて発展してきた料理文化は以降急速に終焉を迎えた。


異国料理

和漢精進料理抄 -- 複製版. -- 臨川書店, 1978.
2029106~8/ 所在:W2 / 請求記号:596.21||1||2-30~32
原本は元禄10年(1697)


中国料理について最も早く紹介したもの。
当時の日本料理ではほとんど使われていなかった植物油を多く使い濃厚な味。卓を囲み大皿に乗った料理を各人が取り分けるのが特徴である。
37種のうち「油で揚げる」「煎りつける」料理は27種。



卓袱(しっぽく)會席趣向帳 / 幽閑齋 [著] ; 禿菷子 [編]. -- 複製版. -- 臨川書店, 1978.
20291297/ 所在:W2/ 請求記号:596.21||1||1-3
原本は明和8年(1771) 


卓袱料理とは中国料理のことで、日本は個人膳で食べていたが、中国では大きな卓に覆いをして、大皿に持った料理をみんなで取り分けて食べたことからこの名がついた。



普茶(ふうちゃ)料理抄 / 未達著 -- 複製版. -- 臨川書店, 1978.
2029116~7/ 所在:W2 / 請求記号:596.21||1||1-27~28
原本は明和9年(1772)


元禄10年刊の『和漢精進料理抄』の「唐の部」に解説を加えて絵をつけたもの。
普茶料理は、中国の精進料理。



[名菓雛形揃え] 【十五-17】(2180306) 27丁
菓子見本帳


日本永代藏 巻2 / [井原西鶴著].
21827631/ 所在:1階W4閉架 / 請求記号:913.52||Ih


「舟人馬かた鐙屋の庭」の章
北国一番の米の買い入れ問屋惣左衛門の屋敷と台所の様子。
たくさんの客人をもてなすための巨大なかまどと鍋、たくさんの焼き魚。鍋の横は大きな味噌樽で、鍬を使って味噌をすくっているように見えます。


ちら見、パラ見コーナー
資料番号 書誌情報 請求記号 元の所在名称
10598566 豆腐百珍 : 江戸グルメブームの仕掛人 / 何必醇原著 ; 福田浩訳. -- 教育社, 1988.7. -- 286p, 図版[1]p : 挿図 ; 18cm. -- (教育社新書 ; 原本現代訳 133). 383.8||92 ポーアイ2階W11
10598580 古今名物御前菓子秘伝抄. -- 教育社. 383.8||94 ポーアイ2階W11
10637869 江戸料理をつくる / 福田浩編. -- 教育社, 1991. 596.11||64 ポーアイ2階 大型・変型本
10868065 江戸のおそうざい : 八百善「料理通」. -- 5版. -- 中央公論社, 1996.1. -- 200p ; 30cm. -- (暮らしの設計 ; 129). 596.11||110 ポーアイ地下閉架
10905197 池波正太郎の江戸料理を創る / 藤井宗哲,川口宗清尼?著. -- マガジンハウス, 1999.4. -- 119p ; 21×21cm. 596.11||121 ポーアイ2階W3
10986394 江戸料理百選 / 福田浩, 島崎とみ子著. -- 第3刷. -- 2001年社. -- 274p ; 26cm. 596.11||156 ポーアイ2階W3
11028543 万宝料理秘密箱 : 江戸の名著万宝料理秘密箱より / 奥村彪生著. -- ニュートンプレス, 2003.10. -- 173p ; 28cm. 596.11||175 ポーアイ2階W3
11028550 小粋なレシピ59 : 江戸の名著料理山海卿・料理珍味集より / 博望子原著 ; 原田信男,奥村彪生著. -- ニュートンプレス, 2003.10. -- 173p ; 28cm. 596.11||177 ポーアイ2階W3
11028888 御前菓子をつくろう : 江戸の名著古今名物御前菓子秘伝抄より / 鈴木晋一監修. -- ニュートンプレス, 2003.10. -- 173p ; 28cm. 596.6||303 ポーアイ2階W4
11113881 豆腐百珍 / 福田浩, 杉本伸子, 松藤庄平著. -- [改訂版]. -- 新潮社, 2008.1. -- 127p ; 21cm. -- (とんぼの本). 081||9||141b ポーアイ1階 総記
11296126 江戸料理大全 : 将軍も愛した当代一の老舗料亭300年受け継がれる八百善の献立、調理技術から歴史まで / 栗山善四郎著. -- 誠文堂新光社, 2017.1. -- 223p : 挿図, 地図, 肖像 ; 26cm. 596.11||Ku ポーアイ2階W3
20308094 普茶料理の歴史 : 付「普茶料理抄」現代語訳 / 永田泰嶺著. -- 永田泰嶺, 1978.10. -- 172p ; 22cm. 596.12||20 1階B19閉架
20563851 本朝食鑑 / 人見必大著 ; 島田勇雄訳注 ; 1. -- 平凡社, 1976.11-1981.3. -- 冊 ; 18cm. -- (東洋文庫). 080||3||196-1 3階Q文庫本
22025944 江戸の料理と食生活 : 日本ビジュアル生活史 / 原田信男編. -- 小学館, 2004.6. -- 167p : 挿図 ; 28cm. 383.8||Ha 3階M15
22026101 西洋菓子彷徨始末 : 洋菓子の日本史 / 吉田菊次郎著. -- 増補改訂版. -- 朝文社, 2006.2. -- 383p ; 22cm. 383.8||Yo 3階M15
30523517 近世菓子製法書集成 / 鈴木晋一, 松本仲子編訳注 ; 1. -- 平凡社, 2003.1. -- 冊 ; 18cm. -- (東洋文庫). 080||3||427-1 3階Q文庫本
30532137 近世菓子製法書集成 / 鈴木晋一, 松本仲子編訳注 ; 2. -- 平凡社, 2003.2. -- 冊 ; 18cm. -- (東洋文庫). 080||3||427-2 3階Q文庫本
30771819 錦絵が語る江戸の食 / 松下幸子著. -- 遊子館, 2009.7. -- 119p ; 28cm. 383.8||Ma 3階M15
30813823 朝鮮通信使をもてなした料理 : 饗応と食文化の交流 / 高正晴子著. -- 明石書店, 2010.6. -- 226p, 図版 [2] p ; 20cm. 383.8||Ta 3階M15
30814707 食の街道を行く / 向笠千恵子著. -- 平凡社, 2010.7. -- 276p ; 18cm. -- (平凡社新書 ; 536). 081||132||536 3階Q文庫本
30877672 日本人の宗教と動物観 : 殺生と肉食 / 中村生雄著. -- 吉川弘文館, 2010.9. -- vii, 199p : 挿図, 肖像 ; 20cm. 383.8||Na 3階M15
30885974 包丁侍舟木伝内 : 加賀百万石のお抱え料理人 / 陶智子, 綿抜豊昭著. -- 平凡社, 2013.10. -- 275p ; 20cm. 383.8||Su 3階M15
30908291 絵でみる江戸の食ごよみ : 江戸っ子の食と暮らし / 永山久夫文・絵. -- 廣済堂出版, 2014.3. -- 263p : 挿図 ; 19cm. 383.8||Na 3階M15
30919730 江戸の食文化 : 和食の発展とその背景 / 原田信男編. -- 小学館, 2014.5. -- 207p : 挿図, 地図 ; 21cm. 383.8||Ha 3階M15

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